「木造住宅は鉄骨造と比べて地震に弱い」というイメージをお持ちの方もいるかもしれません。
確かに、昔の木造住宅は耐震性の向上が不十分な建物もあり、鉄骨造よりも耐震性が劣っているケースもありました。
しかし、現代の木造住宅は、鉄骨造と比べても引けを取らない耐震性を実現することが可能です。
そこで今回は、木造住宅の耐震性と鉄骨造との違いを解説します。
耐震性の高い家を建てるコツも紹介しますので、地震に強い木造住宅を建てたい方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
木造住宅は地震に強い?弱い?
結論からお伝えすると、現行の耐震基準を満たした建物であれば、木造住宅でも高い耐震性を確保しています。
現行の耐震基準は、2000年に改正されたもので「新耐震基準」と呼ばれます。
建築基準法によると、新耐震基準を満たした建物なら木造・鉄骨に関わらず、震度6強~7に達する程度の大規模地震でも倒壊・崩壊するおそれのない建築物とすると定められています。
実際に、熊本地震における木造の建築時期別の被害状況を確認してみましょう。
国土交通省が発表した「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」の報告書では、築年数が新しくなるにつれて全壊などの被害が減少していることがわかります。
・学会悉皆調査範囲において倒壊が確認された2000年以降の木造住宅7棟のうち3棟は接合部仕様が不
十分であり、1棟は敷地の崩壊、基礎の傾斜等が確認された。残る3棟については、明確な被害要因が
確認できず、震源や地盤の特性に起因して局所的に大きな地震動が作用した可能性が考えられる。
2,000年の新耐震基準を満たした建物は約6割が無被害、約3割が比較的軽度の損壊でした。
上記にもある通り、倒壊が確認された建物は、耐震性を確保できない何らかの要因があったことも報告されています。
つまり、現行の耐震基準に則って建てた住宅であれば、木造でも十分な耐震性が確保できるのです。
木造と鉄骨造の耐震性の特徴
木造と鉄骨造は、どちらも新耐震基準を満たした建物を建築できます。
しかし、それぞれ耐震性に関する特徴が異なりますので、違いを確認しましょう。
木造住宅の耐震性の特徴
木造住宅は、柱や梁などの構造体の接合部に、金物やプレートを使用して緊結することで耐震性を高めることが一般的です。
また、壁の量と配置を計算する「壁量計算」を用いて、壁を適切には入りすることで自身に対する抵抗力を高めています。
木造住宅の耐震性の特徴は次の3つです。
軽量性 | 木造住宅は構造材が軽いため、地震の際に受ける揺れの力が小さく、建物全体の負荷が軽減される。 |
柔軟性 | 木材は柔軟性があり、ある程度の変形に耐えることができ、地震エネルギーを吸収して建物の破壊を防げる。 |
施工の容易さ | 木造は現場での加工が比較的容易で、職人の技術により細かな調整できる。 |
木造は鉄骨造に比べて軽量で柔軟性もあるため、地震の揺れをによる建物への負荷を抑えることができます。
また、現場での細かな加工がしやすいので、耐震性を高めつつ希望の間取りを作りやすい点も特徴です。
鉄骨造住宅の耐震性の特徴
鉄骨造の建物は、ボルトや溶接によって鉄骨同士を強固に結合します。
筋交いやブレースで鉄骨の構造材を補強し、建物全体の耐震性を向上させることが一般的です。
鉄骨造住宅の耐震性の特徴を紹介します。
高強度 | 鉄骨は非常に高強度で、圧縮力や引張力にも強いため、地震の大きな揺れにも耐えられる。 |
均質性 | 鉄骨は工場で一貫した品質で製造されるため、材質の均質性が高く、設計通りの性能を発揮しやすい。 |
延性 | 鉄骨は延性があり、大きな変形に耐えることができるため、地震時に吸収できるエネルギーが大きい。 |
鉄骨は木造に比べて硬いので、揺れに耐える力が強い一方で、延性もあるためエネルギーを吸収する力を持っています。
かた、工場での製造過程が多いことから、設計通りの構造材を個体差なく作り出すことが可能です。
木造住宅を建てるメリット
木造住宅を建てるメリットを紹介します。
鉄骨造と比べて費用を抑えられる
木造住宅は、鉄骨造の建物と比べて建築費用を抑えられるケースが多いです。
そのため、建物の面積を広げることができたり、予算を抑えてマイホーム計画を立てたりすることができます。
ただし、依頼するハウスメーカー・工務店によって費用はことなりますので、事前に確認してみてくださいね。
断熱性能を高めやすい
木造住宅は鉄骨造と比べて断熱性能を高めやすいという特徴があります。
なぜなら、木は鉄よりも熱を伝えにくいため、外気の影響を受けにくくなるからです。
また、木材には調湿機能もあるため、室内環境を高められる点も鉄骨造にはないメリットでしょう。
火災で倒壊しにくい
木造住宅は火災で倒壊しにくい点も特徴です。
鉄骨住宅の場合、構造部が熱せられて一定以上の温度になると、鉄が溶けて一気に倒壊が進みます。
一方で、木材が燃えやすいのは外側の部分のみなので、木の中心部は強度が低下しにくく倒壊を防げるケースも少なくありません。
木造住宅を建てるデメリット
木造住宅にはデメリットもありますので、内容と対策を理解しておきましょう。
シロアリの被害を受けやすい
シロアリは湿った木材を好むため、対策をしないと被害を受けやすい点はデメリットです。
新築時に防蟻処理をしっかりと行い、その後も点検やメンテナンスを行いましょう。
ただし、鉄骨造の場合も木材を全く使わないわけではないため、入居後は定期的に点検をして状態を把握することが大切です。
仕上がりが材質・職人の腕に左右されやすい
木造は鉄骨造と比べて、建物ごとで品質の差がつきやすいと言われています。
なぜなら、木材は天然素材なので品質にバラつきがあるからです。
木を薄くカットして何重にも貼り合わせた集成材なら、個体差が出にくく反りや曲がりなどの変形もあまりありません。
無垢材とのメリット・デメリットを比較しながら、高品質な木材を選びましょう。
また、木造は現場で職人さんの作業が多いため、鉄骨造と比べて仕上がりに差が出やすいという特徴も。
構造見学会や完成見学会に参加し、建物の仕上がりを確認してから、家づくりを依頼する住宅会社を選ぶことをおすすめします。
木造住宅の地震対策【耐震・制震・免振】
木造住宅には、さまざまな地震に関する対策方法があります。
住宅会社がどのような方法を採用しているかによって、耐震性やコストなどが変わりますので、事前に確認しましょう。
耐震
耐震とは、建物が地震の「揺れに耐える」力を高める方法です。
建物に筋交いや耐力面材を入れたり、構造材同士を強固な金物で接合したりすることで、建物を強くします。
耐震工法は、建築コストを抑えやすく、設計の自由度も高い点がメリットです。
一方で、地震の力をそのまま受けるため、繰り返しの力には弱いという特徴も。
制震と組み合わせて耐震性を高めている会社などもありますので、確認してみましょう。
制震
制震とは、建物の「揺れを吸収」する方法です。
主に制震ダンバーという装置を使い、揺れによるエネルギーを吸収して熱エネルギーに転換し、空気中に放出します。
そのため、耐震だけと比べて建物への負荷が軽減し、繰り返しの地震でも耐えられる可能性が高まります。
制震ダンパーも比較的費用をかけずに採用可能です。
ただし、耐震+制震が基本のため、制震にするためには耐震の建物に費用を上乗せするイメージを持っておくと良いでしょう。
制震ダンパーは数や位置によって効果が異なるため、施工実績が多い住宅会社に依頼することをおすすめします。
免振
免振とは、建物と地盤を切り離して地震の「揺れを受け流す」方法です。
建物と基礎の間に特殊な免震装置を施工することで、建物自体の揺れを大幅に減らすことができます。
建物の揺れを抑えるため、家具の損傷や家の中にいる家族の安全性が守られやすいです。
一方で、費用は高額なケースが多く、縦揺れにはあまり力を発揮できないという一面も。
コストパフォーマンスを考えながら、採用することをおすすめします。
耐震性の高い木造住宅を建てるポイント
耐震性の高い木造住宅を建てる11個のポイントを紹介します。
- 建物形状の凹凸を減らして四角形に近づける
- 1・2階の壁のバランスを取る
- 2階部分をオーバーハングさせない
- 平屋建てにする
- 屋根・外壁に軽量な部材を選ぶ
- 建物の角を窓ではなく壁にする
- 耐震等級3が確保できる設計をする
- 基礎や床を強固にする
- 強固な地盤を選ぶ、または適切な改良工事をする
- 湿気が溜まりにくい構造にする
- 定期的にメンテナンスをする
建物形状から外装材の種類や湿気対策など、耐震・制震・免振を選択する以外にも、様々な耐震性に対するポイントがあります。
詳しくはこちらのコラムで解説していますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
▷参考コラム:地震に強い家の特徴11選|耐震性を確保した木造住宅を建てよう
また、平屋の耐震性については、下記コラムをご覧ください。
▷参考コラム:平屋はほんとうに地震に強いのか?平屋の耐震性について解説します
まとめ
木造住宅は地震に弱いと言われることもありますが、現行の新耐震基準を満たした建物であり、しっかりと施工されていれば十分な耐震性を発揮します。
鉄骨造と比べて優れている面もたくさんあり、木材の強度を活かして弱みを補えるような建物にすることが大切です。
住宅会社によって耐震性に関する取り組みは異なりますので、事前にしっかりと確認してから家づくりを依頼しましょう。
アイリスホームでは、お客様の暮らしに寄り添った「耐震等級3相当」の家づくりをしています。
耐震性を高めた安全に暮らせる住まいを建てたいという方は、ぜひお気軽にご相談ください。